なんでもやってあげるのはNG?介護の自立支援とは

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なんでもやってあげるのはNG?介護の自立支援とは

はじめに

介護の現場では、利用者様の生活の全てを介護職員が補助すると思っている方も多いでしょう。
しかし実際の介護の現場では、利用者様が自身でできることを維持する自立支援も重要視されているのです。

自立支援は生活訓練とも呼ばれ、利用者様が自分らしい生活を続けていくために欠かせない支援なのです。
今回はその介護現場での自立支援について、詳しくご紹介します。

介護業界での自立支援とは

介護業界では、自立支援は基本的な考えに組み込まれています。
しかし介護施設の種類や、介護職員それぞれの立場や捉え方によって、自立支援の考え方は微妙に異なるのです。
以下では有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの介護現場での、自立支援の考え方について確認しましょう。

介護現場の自立支援

介護現場での自立支援の根底には、利用者様の意思を尊重する、という基本理念があります。
そのため介護現場では、利用者様が満足できる日常生活を送れるようにサポートすることを、自立支援と呼んでいるのです。

介護職員はまず、利用者様が可能なこととそうでないことを見分け、できないことをサポートします。
利用者様の助けを求める声が無い限りは、その他のことは手助けせず見守るのです。
このようにすることで、利用者様は日常生活や社会生活に欠かせない身体機能が向上し、自信につながります。
その結果、利用者様は満足感のある自分らしい生活を送ることができるのです。

介護現場における自立支援の目的

利用者様の多くは介護が必要になったという事実から自分の存在意義を見失い、自信を喪失しがちです。
そのため介護現場では、自身の存在価値を意識させる自立支援を通して、利用者様に自信を取り戻してもらおうとしています。
利用者様が自信を取り戻すことで、QOL(Quality Of Life=「生活の質」)が上がったり、介護度が上がりにくくなったりするのです。

さらにその結果、介護にかかる負担も減るという介護スタッフ・ご家族側のメリットもあります。

介護業界での自立支援の方法

介護現場の自立支援は、生活で必要になる介護に取り入れられています。
そのようにすることで利用者様は機能訓練を日常的に受けることができ、より満足感のある生活を取り戻しやすくなるのです。

介護現場では具体的にどのような自立支援が行われているのでしょうか?
タイプ別のケア方法を見ていきましょう。

運動における自立支援

介護現場では食堂と自室までの距離や、トイレまでの距離を歩行訓練として利用することが多いです。

また歩行に不安がある状態の利用者様には、歩行器や手すりを使って歩く運動を勧めます。
介護職員は運動時に利用者様がケガをしないように、しっかり利用者様を守ります。
しかし介護職員は手を添えたり、必要な時に支えたりするだけで、運動の内容は基本的に利用者様の意思に任せるのです。

食事介助での自立支援

食事介助のときにも、できる限り自分で食事をとれるように介護職員は箸やスプーンを利用者様の手に持たせます。
介護職員は基本的に見守りますが、肺に食べ物が入り、むせてしまう誤嚥が起きることもあるので、常に注意を払います。
誤嚥は肺炎に繫がる危険性も高いので、誤嚥予防の工夫として、食べ物を誤嚥しにくい形状にします。
これも自立支援の一つの形といえるでしょう。

水分補給での自立支援

利用者様は脱水状態でも喉の渇きを感じにくいことが多く、知らない間に脱水症になってしまいやすいのです。
そのため介護職員は利用者様に定期的に水分補給を促します。
水分補給は年齢とともに衰えがちな飲み込む力の訓練にもなるのです。

しかし水分は誤嚥しやすいので、利用者様の状態によっては水分にとろみをつけたり、ゆっくり飲ませたりと誤嚥予防の工夫がされています。

トイレ介助での自立支援

トイレでの排泄はそれ自体がリハビリになるので、極力おむつは使用せず、利用者様にはトイレでの自然な形での排泄を促します。
必要であれば介護職員は体を支えますが、基本的には見守るというスタンスです。

トイレが自力でできることは利用者様にとって大きな自信になるので、介護現場においてトイレの自立支援は特に重要とされています。

介護業界での自立支援の課題

介護現場での自立支援には、いくつかの課題もあります。
高齢化がますます進むとされている日本では、自立支援に関する課題を解決していくことが急がれているのです。
具体的にはどんな課題があるのでしょうか。

介護報酬のルール上の問題

介護業界での自立支援は、利用者様の介護度を下げることを目標にしています。
しかし現在の介護報酬のルールでは、利用者様の介護度が下がると、事業所が受け取る介護報酬が少なくなってしまいます。

さらに介護報酬は3年毎に厚生労働省によって改定されますが、現在の介護報酬では経営がギリギリという介護施設も多いのが現状です。
自立支援に積極的な介護施設を増やすために、現在伐根的なルールの改正や、公的な報償金制度を設けるなどの対策が求められています。

科学的な根拠の確立

現在の介護業界の自立支援には、科学的な根拠が存在しなません。
そのため、介護施設のデータを1つに集めて分析し、科学的な根拠を示せるようにすることが自立支援の手法を確立・改善するためにも急務とされています。
化学的な根拠の確立のためには、現在行われている自立支援のデータが必要です。
日本全国の介護事業所が、互いに情報をやり取りできるシステム作りが必要でしょう。

利用者様への配慮

利用者様の中には介護業界の自立支援を強迫的に感じる方もいる、問題もあります。
加齢と共に身体機能が低下してしまうのは、誰でも起きうることです。
利用者様が自立支援を前向きに捉えられるよう、介護職員は今できることをできるだけ長く維持するという考え方を、利用者様に上手く伝えていかなくてはいけません。

おわりに

介護業界の自立支援は、利用者様の介護度の上昇を抑え、生活を豊かにするために欠かせない支援です。
しかし自立支援の方法に科学的根拠がなされていないなど、まだ多くの課題が残されており、高齢者人口が増えていく今後を見据えて解決が急がれています。
そのため介護職員は利用者様1人1人に向き合い、それぞれの利用者様に合うアプローチで自立支援を行うことが大切といえるでしょう。

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