デイサービスはサービス残業が多い?理由と対処法とは
はじめに
介護事業所は、ただでさえ忙しいのに人手が足りないことも重なり、残業が多い職種だといわれます。
中でもデイサービス事業所は、業務の特徴から介護業界の中でも多い方かもしれません。
当たり前ですが、サービス残業は違法です。
この記事では、なぜデイサービスはサービス残業が多くなりやすいのかという理由と、少しでも減らすためにはどうすれば良いのかという対処法をご紹介します。
デイサービスにはなぜ残業が多いのか?
デイサービスは、他の介護サービス事業所とは少し違う特徴があります。
その特徴が実は、デイサービスの残業が多くなってしまう原因ともいえるのです。
細かくみていきましょう。
介護業務以外の仕事が定時内にできない
デイサービス事業所の一日の主な流れは、次のとおりです。
1.当日の準備と申し送り事項
2.自宅などへの迎え(送迎車を運転)
3.事業所に着いたらバイタル(体温、血圧、脈拍など)測定
4.入浴介助や余暇時間、個別機能訓練など
5.昼食前の集団体操など
6.昼食介助・口腔ケア
7. 午睡
8.レクリエーションや体操など
9. 午後のおやつ
10. 自宅などへの送り(送迎車を運転)
11. 事業所へ戻り掃除・介護記録
12. 翌日の準備
もちろんバイタル測定は看護職員が行いますし、個別機能訓練は機能訓練指導員が行いますので、すべてを介護職員が行うわけではありません。
それでも、一日のうちでこれだけの仕事を行います。
職員だけでできる仕事以外は、すべて利用者様に対する介護業務です。
デイサービスの場合は、サービス提供時間というのが定められています。
その時間は原則として、事業所で利用者様にサービスを提供する時間となっています。
仮にサービス提供時間が7時間、一日の常勤職員の労働時間が8時間だとした場合、7時間以外の時間で送迎を行いますから、朝の迎えと夕方の送りで合計30分かかった場合、残りはたった30分です。
この30分間で、介護業務以外の仕事を行うのは中々難しいといえるでしょう。
送迎で定時を超えてしまう
前述したとおり、サービス提供時間に送迎が含まれていないとすると、例えば複数の利用者様を送迎する場合、事業所に戻ってくる時間が終業時間を超えてしまうという場合があります。
例外として、利用者様と一対一の送迎で、しかもベッドから車いすへの移乗など自宅内介助が必要の場合、送迎の時間もサービス提供時間に含まれることになっています。
しかし、このようなケースばかりではありませんし、そもそも皆が一対一の介助を必要とするのであれば、送迎に出る人員や車の数も多く用意しなければなりません。
これはコストもかかる問題なので、難しいのです。
そもそも申し送りやミーティングが定時外に設定されている
前項では、送迎の戻りが終業時間を超えてしまうことに触れましたが、始まりも同様です。
例えば、職員の労働始業時間が8時30分で、デイサービスのサービス提供時間が9時だったとします。
前述したとおり、サービス提供時間は原則として事業所に居る時間ですから、9時までには朝の迎えから戻っていなければなりません。
事業所から近い場所ばかりに利用者様がいればよいのですが、そうではないことがほとんどですし、一台の送迎車に一人の利用者様を乗せるだけだと効率が悪くなります。
だいたいが乗り合わせです。
この場合、8時30分から送迎に出ていては間に合わないことがあります。
そのため、朝の申し送りは8時30分までには終了していなければなりません。
つまり、労働契約時間外に申し送りを行うことになるのです。
また、デイサービスでも「サービス計画書」いわゆるケアプランを作成しなければいけません。
そのために多職種が集まり会議を行い、意見を出し合って作成しなければならないと定められています。
前述した一日の流れの中で、会議を行っている時間はほとんどありませんので、終業後や、昼休みを短く切り上げるなど必然的に残業が発生してしまうのです。
「残業」が「サービス残業」になってしまう原因とは?
デイサービスに残業が多くなりやすい原因は、だいたいおわかりいただけたかと思います。
ではなぜ、その残業がサービス残業となってしまうのでしょうか。
残業申請する環境が整っていない
まず一つの理由として、事業所へ残業を申請するための職場環境や人的環境が整っていないということが考えられます。
例えば、事業所によってはサービス残業という証拠が残らないように定時にタイムカードを押してまた仕事に戻るという暗黙のルールがあるとか、残業を申請しても上司が受け入れてくれないという状況があります。
これら外的な要因は、環境さえ整えれば解決できる問題です。
しかし、事業所が解決しようとしない場合が多くみられます。
というのも介護サービス事業所は、介護保険制度における公的な介護報酬が主な収入源で事業が成り立っています。
よく「介護事業所は人手不足だ」といわれますが、収入さえ多くなれば職員の数も多く雇えるのに、事業所の規模や利用者数によってだいたいの収入が決まってくるので、余計な人手は雇えません。
つまりやむを得ず残業したとしても、事業所運営を考えるとすべてを超過勤務として扱うことができないため、環境を整えることをあえて行わないのです。
残業申請をしてもいいのか、という後ろめたさ
正当な残業であってもサービス残業として扱う事業所の体制は、おそらく今までの年月で培われてきたものです。
そのため、残業代の請求が労働者の正当な権利であったとしても、先輩方が請求していないことを自分だけするわけにはいきません。
そういった環境がサービス残業を生んでいる要因の一つといえます。
(サービス)残業を減らす・防ぐためには?
そうはいっても、サービス残業はよくありません。
少しでも残業を減らし、サービス残業になるのを防ぐためには何ができるのでしょうか。
業務の振り分けを適正化する
デイサービスの主なスタッフ構成は生活相談員、介護職員、看護職員、機能訓練指導員、ドライバーなどです。
このうち、生活相談員や機能訓練指導員は、他の職種と兼務ができます。
特に生活相談員の場合、介護職員と兼務することが多いため、通常の介護職務を行いながら、外部との連携や担当者会議への出席などの仕事を行う必要があります。
そのため「業務の偏り」という状況が生じます。
ですから業務を振り分ける際、他のスタッフができることであれば、できるだけ偏りがないように適正に振り分けることができます。
運用を見直す
新しくできたばかりの事業所なら、いろいろと試行錯誤しながら運用していくため、残業が多くなるのもうなずけます。
しかし、設立して何年と経過している事業所であれば、業務内容を見直すことができます。
これは、単に一日の流れを見直すというよりも、掃除や事務作業など利用者ケアと関わらない分野を見直すことがポイントです。
利用者ケアに関わっていることだと、どうしても相手がいることなので、事業所側の都合でコロコロと変えることはできません。
見直してみると案外、今までは「絶対に必要」と思っていたことが、実はそんなに重要ではなかった、ということがあるものです。
運用改革を行う時には「残業を減らす」という目的を忘れないようにしましょう。
サービス残業を減らすためには、上に立つスタッフが積極的に申請する必要があります。
管理者や法人の理事長などに状況を説明し、いきなりすべてのサービス残業を無くすというよりも、まずは15分、30分と少ない時間から手当を出すこともできます。
逆に、30分を超える残業になった場合には必ず申請する、というルールを決めてもよいでしょう。
どうしても残業が嫌なら派遣にキャリアチェンジという手も
前述したような対策を講じても(サービス)残業が減らない場合で、そのために事業所を辞めようか、と悩んでいるのだとしたら、派遣スタッフとしてのキャリアチェンジも視野にいれましょう。
派遣スタッフは決められた時間帯での契約なので、直接雇用しているスタッフよりも定時で上がれることが多いのです。
また派遣スタッフの残業代は雇用主である派遣会社から支払われますので、残業代が支給されない、といったトラブルも防ぐことが出来ます。
残業はなるべくしたくない、残業代はしっかりもらいたい、という方には派遣という働き方も向いていると言えます。
おわりに
デイサービスは、その特徴ゆえに残業が発生しやすい介護サービスです。
しかし、今はワークライフバランスを大切にする時代。
雇用される側としても、時間内は一生懸命働きさえすればきちんと権利を主張しても良い時代です。
しかし中には、理解してくれない事業所もあることでしょう。
そのような場合でどうしても定時で帰りたいという方は、派遣へのキャリアチェンジを考えるのも手です。
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