海外の介護事情 日本との違いは?
はじめに
近年日本を訪れる外国人旅行者が増え、情報化社会になって海外の情報も簡単に手に入れられるようになってより海外のことが身近に感じられるようになってきましたね。
では海外の「介護」事情はどこまでご存知でしょうか?
意外と知られていない海外の介護事情について、今回は福祉先進国が多く集まるヨーロッパに焦点を当てて事例をいくつかご紹介したいと思います。
1. オランダの認知症村「ホフヴェイ」
オランダには認知症を患った方が暮らす介護施設「ホフヴェイ」、通称「認知症村」があります。
この施設(村)のコンセプトは「認知症が進行しても、できるだけ日常の生活が過ごせること」。
ここでは入所前のライフスタイルに合った住居棟で暮らすことができ、敷地内にはカフェや映画館などが設営されて一般の店と同じように利用することができます。
もちろん医師やナース、介護スタッフが常駐しており、足りない部分はボランティアスタッフがフォローします。
住人がレジで支払いを忘れたとしても、登録されたナンバーでまとめて精算できるシステムが備えられているので、失敗経験による不穏や問題行動の原因を最小限に抑えられます。
一区画に認知症患者を住まわせることに批判の意見もあるそうですが、穏やかな暮らしを送るためにはある程度の「区別」があってもいいのかもしれません。
2. フィンランドの介護事情
フィンランドと聞くと福祉大国のイメージがありますが、高齢者福祉に限定するとそのイメージは少し違ったものが見えてきます。
まず日本と大きく違うのが、子供と高齢になった親が別々に暮らすことが基本であること。
フィンランドのお年寄りは老いても身の回りのことは自分でしたい思いが強いようです。
フィンランドではかつては施設介護が主流でしたが、在宅介護メインの方針に切り替えました。
それでも在宅介護だけでは賄えない状況になってくると施設の入所も検討されますが、医師の診断書が必要になり、医師からもまずは家族介護をと勧められるケースが多いんだとか。
何度か市役所に訴えないと入所許可が下りず、家族が交代で面倒を見ることも多くあるそうです。公立の老人ホームはサービスの水準は決して高くなく、使用料の高い民間の老人ホームの方がいいサービスを受けられる点は日本と変わらないようです。
3. ドイツの芸術家向け老人ホーム
高級志向の老人ホーム、アットホームな雰囲気の老人ホームなど日本でもタイプの違う老人ホームは存在していますが、ドイツの老人ホームはまた特殊です。
今回ご紹介するのは「芸術家向け」の老人ホーム、「マリー・ゼーバッハ」。
家族を作ることができない、経済的に厳しい舞台芸術家のためにドイツの女優マリー・ゼーバッハが彼らの終の棲家として設立したのが始まりで、現在も元女優や元演奏家など芸術家たちが暮らしています。
マリー・ゼーバッハのポリシーは「住民はみな家族である」。
住民のほとんどが延命治療をせず、この「家」で自分らしく最期を迎えることを望んでいます。
そのために人数配置も手厚くしてあり、夜更かし好きな芸術家のために夜食もついています。
料金はその人の収入によって異なり、一律料金設定がされている日本の介護施設の制度とは大きく異なります。
経済的に厳しいゆえに入りたくても入れない、といった日本の利用者とその家族にとっては羨ましいシステムですね。
おわりに
今回は福祉先進国の多いヨーロッパを中心に紹介しましたが、アジアではまだ家族介護が中心となりヘルパーの育成や研修が遅れているのが実情です。
日本も高齢者がよりよい生活を送るためにも、海外の介護施策で学べることは学んでいきたいものですね。