利用者様から介護職への暴言・暴力の対処法

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利用者様から介護職への暴言・暴力の対処法

はじめに

昨今「入居者虐待」がニュースに上がる中で、利用者様から介護職員への暴言や暴力も深刻な悩みとなっています。
当たり前ですが「暴力を振るってやろう!」と決意して行う利用者様はいません。

なぜ暴言や暴力といったことが起こるのでしょうか。
また暴言や暴力にどう向き合っていけばいいのでしょうか。
今回は利用者様からの暴言・暴力について解説していきます。

暴言・暴力の原因とは

利用者様からの暴言や暴力は理由なく起きているのではありません。
では暴言や暴力の原因とは何なのでしょうか。
主な2つの原因についてご紹介します。

認知症などによる脳の機能低下
一例として、アルツハイマーなどの認知症は「脳」の病気です。
認知症というのは脳の機能低下によっておこるもので、例えば、怒りを抑えるための脳の機能が正常に働かなければ、暴言や暴力につながってしまいます。

また、脳血管性の認知症(小さい脳梗塞を繰り返すことによって、だんだんと脳の機能低下が起こる)であっても、やはり怒りを司る脳の機能が低下するため、怒りやすくなってしまいます。

さらに、脳だけではなく精神的な病(統合失調症など)を抱えていても、感情をコントロールすることが難しくなるため、暴言や暴力が出やすくなる傾向がみられます。

身体が思うように動かない苛立ち、不安
病気や障がいがないように見えても、高齢者の場合には、自分の身体を思うように動かすことができないため、苛立ちを覚えやすくなります。

特に、脳出血や脳梗塞などで半身麻痺になり、利き手側が動かなくなってしまった場合、リハビリは過酷なものになります。
若い時なら、体力や柔軟性もあって新しいことでも短時間で覚えられたかもしれませんが、高齢者の場合にはすべてのことに時間がかかるようになります。
そのため、思いどおりにならない苛立ちや不安が押し寄せてきて、暴言や暴力となって表現されてしまうのです。

特に利用者様は「これからどうなってしまうのだろう」というような不安と、いつも闘っています。
そのため、通常なら何の問題もないような、ほんのわずかな刺激でも不安が増大して怒りへと発展することもあるのです。

暴言・暴力が出たときには

暴力・暴言の原因は分かりましたが、実際に利用者様から暴言や暴力が出た場合には、どのように対処すればよいでしょうか。
お互いに傷つかないように配慮しなくてはなりません。
具体的な方法をご紹介します。

原因を探る
冒頭でも述べたように、暴言や暴力をしたくてしている人はいません。
なぜそのような状態になったのか、原因を探ってみる必要があります。

原因が分からなければ対策も見つかりません。
利用者様の心身の状態なのか、介護職員の接し方なのか、環境なのか、
怒りへと発展した根本的原因を探り、無くすことが重要です。


距離を置く
怒りというのは、一度爆発してしまうとなかなか治めることができないものです。
その状態の時に、何かしようとしても逆効果になります。

特に認知症などによって脳の機能が衰えている場合、気持ちを落ち着けたり冷静に考えたりする機能も衰えています。時間をおいてクールダウンしてもらうためにも、距離をおくのは妥当なことです。
この方法は、怒りの矛先となる職員を守ることにもつながります。


介助者を変える
暴言や暴力の原因が特定の介助者であると、距離や時間を置いたとしてもその時の感情が呼び起こされて暴言や暴力が再発してしまう可能性があります。

この場合には、その方の対応をする介助者を変えるというのも、有効な手段となります。
介助者を変えることで今まで見ることができなかった利用者様の一面を見ることができるかもしれません。

暴言・暴力の予防・改善策

暴言や暴力への対策についてご紹介しましたが、やはり暴言・暴力をさせない・受けないことが一番です。
ではどういった予防・改善策が有効なのでしょうか。

医師に相談する
一例として、アルツハイマー認知症の方は、処方されている薬がその人に合わないことがあります。

もともとアルツハイマー型の場合、認知症の症状として現れるものの中に「易怒性」つまり「怒りやすさ」があります。
処方されている薬が合わないと、この易怒性に拍車がかかり暴言や暴力の傾向が高まることがあるのです。
また統合失調症などの精神的な病気においても、薬が合わないと怒りっぽくなる症状がでるものがあります。

そういった病気の利用者様に対しては、服用している薬によるものなのかどうか、医師に相談してみてもいいでしょう。

また処方されている薬がなかったとしても、比較的副作用が少なくて効果の薄い精神安定剤などで、暴言や暴力が治まることもあります。

関わり方を変えてみる
利用者様の中には、特定の職員だけに暴言や暴力をふるう場合もあります。
また、あるキーワードや行動が職員にみられた時に、怒りだす方もいます。

このような場合には、その利用者様とのかかわり方自体を見直すことが必要です。
たとえば、いくらこちらから声を掛けても本人が納得しなければ動作につながらない利用者様の場合、何度も声をかけて急かすのではなく、時間をかけて待つように接し方を変えてみましょう。


おわりに

「福祉施設での虐待」と聞くと、職員から利用者様への暴力を想像する人がほとんどですが、内情は、利用者様から暴言・暴力を受けている職員もいるのです。

現場で働く職員は、自分の身は自分で守らなければなりません。
しかし、一人だけでなんとかしようとしても限界があります。
周りの職員と協力して、施設全体で対応するようにしましょう。