デイサービスの個別機能訓練とは? どんな内容を行うのか

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デイサービスの個別機能訓練とは? どんな内容を行うのか

はじめに

現在、要介護状態の悪化予防の観点から、デイケア(通所リハビリ)施設だけではなくデイサービスにもリハビリが求められます。

デイサービスに通う利用者様は、支援や介護が必要な身体・精神状況になりながらも、日ごろは自宅で暮らしています。

そのまま自宅で暮らし続ける、という目的を叶えるために要介護状態の悪化予防が急務なのです。デイサービスの個別機能訓練は、その目的を叶えるための手段といえます。

デイサービスの個別機能訓練とはどのようなものなのでしょうか。
具体的にどんなメニューで訓練を行えばよいのでしょうか。

個別機能訓練とは

デイサービスで行うリハビリは、集団体操やレク体操などいくつか種類があります。

そのうち、利用者様に対し個別に機能訓練を行うのが「個別機能訓練」です。
ADL、QOLの維持・向上につながります。


個別機能訓練とは
個別機能訓練とは、身体機能や生活機能の維持・向上を目的として、利用者様お一人おひとりの心身状況などに合わせて行われる訓練のことです。

デイサービスで行う個別機能訓練は、要支援認定や事業対象者の方を対象としていないため、要介護1以上の認定を受けた方が対象になります。


個別機能訓練の内容
個別機能訓練は、大きく分けて次の2種類となります。

①  「身体機能」の維持・向上を目的としたもの
「身体機能」とは歩いたり、食べたり、何かを手に持ったりする基本的な身体の機能のことです。
わたしたちが日常生活を当たり前のように送れるのは、身体機能が維持できているからなのです。

このような機能を維持するため、歩行訓練や筋力向上訓練を行います。
また筋力が向上しても、肘や手首、膝や足首など各関節が上手に動かないと身体機能は維持できないため、関節の可動域を維持する訓練などを行います。


②  「生活機能」の維持・向上を目的としたもの
「生活機能」とは、日常生活を送るために必要な動作のことです。

例えば、入浴介助が必要な方が「一人でお風呂に入れるようになりたい」という目標を立てたとします。

お風呂に入るには、一般的な例として次のような行程が必要です。

・湯舟に適温のお湯をためる(栓をすることも含む)
・浴室と脱衣室の温度差をなくすため、暖房器具を操作する
・お風呂から出た後の着替えを脱衣場に用意する
・脱衣場で服を脱ぐ
・浴室に移動する(濡れている可能性が高いので滑らないように注意する)
・シャワーなどを操作し、ボディタオルで体を洗ったり(洗身)、洗髪したりする
・湯舟に入る(転倒、溺れに注意。体を洗う前に湯舟に入る人もいる)
・体が温まったら湯舟から出る(転倒に注意)
・かけ湯をする
・脱衣場に出て、体を拭く
・服を着る

一人でお風呂に入るには、この動作のどこに障害があるのかを機能訓練を行う機能訓練指導員が見極め、その障害を取り除くための「動作訓練」を行います。
これが「生活機能訓練」です。

例えば片麻痺があって自力で服を脱ぐことが難しい場合、一人で浴室に移動したり洗身したりすることも難しいことが多いものです。

これらの動作を一つ一つクリアするための実践的な訓練プログラムを立て、実施します。

個別機能訓練加算(Ⅰ) と加算(Ⅱ)の違いとは

理学療法士や作業療法士、看護職員、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師など機能訓練指導員を配置して個別機能訓練を行うと、個別機能訓練加算(Ⅰ)か個別機能訓練加算(Ⅱ)を介護報酬上で算定することができます。

2つの加算の違いは何でしょうか。

個別機能訓練加算(Ⅰ)
身体機能の維持・向上をメインに行っている場合に算定できる加算です。
1日につき46単位(460円)の加算が算定できます。

常勤の機能訓練指導員の配置が必要ですが、必ずしも機能訓練指導員が直接訓練を行う必要はありません。
機能訓練指導員の指導の下、介護職員など別の従事者が実施した場合でも算定が可能です。

訓練の対象者は要介護1以上の利用者様で、一人ひとり個別に訓練を行う必要があります。
デイサービスの利用ごとに訓練を行っているなら、毎回加算を算定することができます。


個別機能訓練加算(Ⅱ)
生活機能の維持・向上を目的として機能訓練を行っている場合に算定できる加算です。
1日につき56単位(560円)の加算が算定できます。

加算(Ⅰ)との大きな違いは3つあります。
1つ目は、機能訓練指導員の配置が常勤ではなくてもいいという点です。
例えばサービス提供時間が7時間以上8時間未満の場合、半日の4時間しか指導員が配置されていなくても、加算(Ⅱ)なら算定が可能です。

2つ目の違いは、5人程度の集団で行っても良いということです。
生活機能の訓練は、個々の身体機能を向上させることではなく「動作訓練」なので、同じ目標をもっているのであれば複数人が一緒に訓練できるわけです。
もちろん、個別に行っても構いません。

3つ目の違いは、最低でも週に1回は行わなければならない、ということです。
動作訓練ですから、繰り返し行わなければなかなか目標は達成できません。
ちなみに加算(Ⅰ)は、回数の指示はありません。

デイサービスの個別機能訓練のメニュー

個別機能訓練がどのようなもので、どんな目的をもって行うのかをお伝えしました。

では実際にデイサービスでは具体的にどのようなメニューで訓練を行っているのでしょうか。動画とともにご紹介します。

①  デイサービスひとつば 機能訓練風景.1


一つの機能訓練の動画ではなく、フロア内で行われている機能訓練を紹介しています。

動画の中で、風船を片足で踏みつけている訓練があります。
不安定な風船を踏みつけることで、体幹保持の訓練になります。

足首が固くなると、歩行もしづらくなってしまいますので、足首のストレッチにもなります。
もしかしたらこの方は、踏みつけている足側に麻痺があって力が入りづらいのかもしれません。麻痺側は、使うことが少ないので筋力低下が著明です。
この訓練で、柔らかい運動で筋力維持向上を図る目的もあるのでしょう。

② レクをするというアプローチから機能訓練につながるレクへ


模造紙に書いたマスに47都道府県を書き、お手玉を投げていくというレクです。一度お手玉が落ちたマスには×印を書き込み、×がついていないマスを狙って投げていきます。

×がついていないマスを狙うには、お手玉を投げる力や角度などをコントロールする必要があります。
目的を達成する手や腕の動作には、コントロールが必要です。

お手玉を投げる時には、だいたいの方が両足の底をしっかりと床につけ、体を前へ倒して背もたれから背中を離して投げます。これは体幹保持の訓練にもなります。

楽しみながら訓練ができますし、チーム対抗戦にすることも可能です。集団で行う訓練となるため、加算(Ⅱ)が対象となります。
上肢の関節可動域運動や体幹保持運動など、同じプログラムが通用する理由などを、記録に残しておく必要があります。


③ 機能訓練の様子(デイサービス)だんらんの家すみだ


これも集団で行う訓練なので、加算(Ⅱ)が対象です。
単なる集団体操にも見えますが、一つ一つの動きは非常に効果的な訓練になっています。

椅子に座ってできますので、大勢の人が対象となります。
前かがみになって腕を下に伸ばす運動は、体幹と脚力、背筋も鍛えることになります。

手拭いを使う運動は、高齢者にとってなじみがある道具を使うので良い手段です。
道具を使えば、自分の感覚だけに頼らずに動かすことができるので、目的を達成しやすいメリットがあります。

おわりに

自宅で、介護が必要となった高齢者が暮らし続けていくためには、身体機能の低下を予防し、ADLの維持・向上を図ることが必要不可欠です。
個別機能訓練はそのために大きな役割を果たします。

利用者様一人ひとりに合ったメニューを用意することによって、その方の生活がより良いものになるようにサポートしましょう。