今更聞けない? 介護の三原則とは?

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今更聞けない? 介護の三原則とは?

はじめに

みなさんは「介護の三原則」をご存知でしょうか?
介護職としてお勤めの方は、研修などで一度は耳にした方は多いのではないでしょうか。
介護業界では「〇〇原則」と似たものがありますが、ここでお伝えする三原則は介護職員として働く際に、どのような気持ちで臨めばいいのかという心構えのようなものです。
ご存知の方も、初めて目にする方も介護職の原点に戻るという意味で、ぜひ目を通してみてください。

1. 介護の三原則、生まれたのはデンマーク

介護の三原則は、別の名で「高齢者福祉の三原則」「アナセンの三原則」と呼ばれることもあります。

介護の三原則は1982年、福祉の先進国であるデンマークで生まれました。
当時の福祉省に設置された高齢者問題員会の委員長、ベント・ロル・アナセン氏によって「介護の三原則」が定められ、これが今の介護の基本理念になっています。

デンマークではその後も福祉に関する法律が改定され、現在も福祉国家として世界で確固たる地位を築いています。

2. 三原則の内容その一「生活継続の原則」

ではさっそく、三原則の具体的な中身についてご紹介していきましょう。

一つ目は「生活継続の原則」です。

介護を必要とする人は、肉体的もしくは精神的に他者の支えを必要としています。
支える側、支えられる側、それぞれに事情があるとは思いますが、「介護される人の生活は、できるだけそれまで通りの状態で継続されるべき」というのが、この原則の内容です。

たとえ介護が必要な状態になったとしても、「自分らしい生活を送りたい」と願うのは当然のこと。
もちろん「継続されるべき生活」の中には、「物」だけではなく「これまでの生活習慣」や「考え方」も含まれています。

今まで「朝はコーヒーを一杯飲みながら新聞を読む」ことが習慣だった方が、施設に入所してその習慣を無くしてしまうと、朝から落ち着かず、「自分らしくない生活を送っている」と感じるでしょう。
たった一杯のコーヒーの違いですが、その人にとっては長年続けてきた大事な習慣であり、生活なのです。
生活環境をガラリと変えれば、介護を受ける側の精神的負担は非常に大きくなってしまいます。
特に認知症を患っている利用者さんの場合、症状が悪化してしまうことも珍しくありません。
他人に自分の習慣を勝手に変えられたら、どう思うでしょうか?
自分自身に置き換えてみるとより、「生活の継続性」が重要なのか分かると思います。

3. 三原則の内容その二「自己決定の原則」

二つ目は「自己決定の原則」です。

年齢を重ね、体が不自由になって自分にできることが減ってくると、家族や介護者など周囲の都合でさまざまなことを決められてしまいがちです。
そうではなく、あくまで介護を受ける側に意思決定が存在する、というのが「自己決定の原則」です。

手足が麻痺したり、寝たきりになったりとどれだけ厳しい状態になろうとも、自分のことは自分で決定できる環境が理想です。
その「決定」がその人自身の人生を左右することになります。
どのような介護を必要とし、どのような介護を受けたいのか。
その介護でどんな生活を送れるようになりたいのか。
「自己決定の原則」は前述の「生活継続の原則」にも繋がります。

残念ながら今の日本の介護事情では、介護を受ける本人の意思ですべて決まるのではなく、周囲の都合で判断されてしまうことが多いのが実情です。
特に高齢者は「周囲に合わせる」「周りに迷惑をかけてはいけない」という古くからある日本人特有の思考を持っていることが多く、中々自分の意志を伝えられないということも背景にあるようです。
介護者としてその人がどんな生活を送りたいのか、意志を引き出してあげることも大事なことなのかもしれません。

4. 三原則の内容その三「残存能力活用の原則」

三つ目は「残存能力活用の原則」です。

介護が必要な人の状態は千差万別で、その人それぞれで「できること」と「できないこと」、その度合いに差があります。「できないこと」に対しては、当然手を差し伸べるべきでしょう。
しかし「できること」に関しては、最低限のお手伝いに留めて自身の能力を活用してもらうことが大切です。

介護の仕事に就いている方は優しくお世話好きな性格な人が多く、相手のことを思いやる気持ちから、自分にできることはついなんでもしてあげたくなる!と思うこともあるでしょう。
しかしそんな気持ちが利用者さんの「できる気持ち・能力」を奪ってしまうことになりかねないのです。

介護はあくまでその人がその人らしい生活を送れるように「お手伝い」をすることです。
お箸を持つ力が残っているのであれば、食べさせてあげるのではなく、お箸で自分で食べられるようにサポートをする。
お風呂に入る力が残っているのであれば、浴槽を跨ぐ際に支えてあげるなどサポートをする。


介護とは、あくまで支援、お手伝いであるこということを常に頭の中に入れて業務にあたりたいものですね。
毎日忙しい介護の現場で働いていると利用者様のため、と言いつつもつい介護者本位の考え方や動き方になってしまい、利用者様のことを置いてきぼりにしがちです。
そんな時はこの「介護の三原則」を思い出してみましょう。
きっと原点に立ち返ることができるはずです。